スキルの可視化で育む、時代に即したソフトウェア人材人材育成コンサルティングで始動する「SOMRIE™認定制度」

クライアントさまご紹介


株式会社デンソー

広瀬 智さん
モビリティエレクトロニクス経営企画部 キャリア支援室長

増子 敬さん
モビリティエレクトロニクス経営企画部 キャリア支援室 人材育成課長

自動車業界は“100年に1度の転換期”の真っただ中にあります。新たなモビリティ社会の実現に向けて、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)をキーワードに業界全体で変革の取り組みが進んでいます。CASE時代では、車に搭載されるコンピューターが大規模かつ複雑化し、車内外のソフトウェアと連携して制御することで、より快適で安全なモビリティを目指すようになりました。つまり、自動車業界や自動車部品業界では、これまで以上にソフトウェアの開発が重要になっているのです。

 

この背景から、デンソーでは2019年12月にグループ全体のソフトウェア開発力強化を重要な経営課題として掲げ、グループを横断して「ソフトウェア改革」に取り組んできました。改革をリードするモビリティエレクトロニクス経営企画部 キャリア支援室が導入したのは、NTTデータユニバーシティの「人材育成コンサルティング(研修体系の構築)」です。このコンサルテーションをどのように選定し、いかに活用して育成改革を進めてこられたのでしょうか。人材育成戦略に沿ったコンサルテーションについて、実装を進めたお二人に語っていただきました。

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(取材2024年7月)

100年に1度の変革期に求められる、新たな人材育成の仕組みとは


人材育成コンサルティングを導入した背景をお聞かせください。人材育成にどのように取り組んできたのでしょうか。

広瀬:クルマが目覚ましく進化し、より利便性の高いモビリティ社会を実現するためにも、ソフトウェアの重要性が高まっています。デンソーがこれまで磨き上げてきた車載組み込みの技術だけでなく、車外との連携領域(InCARとOutCAR)の技術も視野に入れていかなければなりません。そこで強化しなければならないのが、ソフトウェアの開発力です。そこで私たちは2019年からソフトウェア改革を経営課題の一つに掲げました。

改革の柱は技術と人材の二本立てです。技術面では、高度化した技術を資産化し、誰もが標準的に活用していける環境を整え、人材面では、人材マネジメントを強化し、ソフトウェア人材の育成を進めます。

この人材マネジメントの強化施策として始動したのが、ソフトウェア技術者を育成・強化する取り組み「キャリアイノベーションプログラム(CIP:Career Innovation Program)」です。

このプログラムは、継続的な学びを支援するリカレントプログラム、キャリア志向と活躍の場をマッチングするアサインプロセス、上位のプロが寄り添って現場で指導するバディ制度、そしてSOMRIE™認定制度から成り立っています。

増子:デンソーは、車載の組み込みソフトウェアに関しては開発技術を蓄積していますが、これからの時代を考えると、それだけでは立ち行かなくなってきます。今後一般的なITやAI、Web系、クラウド関連のソフトウェアが重要になってくる中で、我々の強みだけでなく、新たな強みも必要です。キャリアイノベーションプログラム(CIP)を進める中では、メンバーが持つスキルを可視化する仕組みとして「SOMRIE™認定制度」を定め、ソフトウェア人材が自律自走するサイクルを創り出そうとしています。

2020年7月にソフトキャリア支援室が設立され、広瀬室長をはじめ、6人のメンバーで改革を進めてきました。現在は、ソフトウェアに限定することなく、エレクトロニクスやハードウェアまで広くカバーする育成を視野に入れ、「キャリア支援室」として活動を続けています。

「SOMRIE™認定制度」について掘り下げてお聞かせください。

広瀬:SOMRIE™認定制度の「ソムリエ」とは、Specialist(専門性)、Outline(未来の方向性)、Master(匠)、Revolutionary(革新的)、Impressive(感銘)、Enthusiasm(情熱的)の頭文字から取っています。ソフトウェア技術のスキルを可視化し、人材が目指していくキャリアに必要なスキルを明確にするのがねらいです。

そこで作成したのが「能力マップ」です。これはソフトウェア技術者が自らの能力を把握し、保有スキルを客観的に認定する基準になるものです。ここには、ケイパビリティ(専門性)を7段階のレベルで定義しました。ケイパビリティは、社会価値を創出する企画力が求められる「ストラテジスト」や、システム開発に携わる「システムアーキテクト」「ソフトウェアアーキテクト」、より専門性の高い「データサイエンティスト」など、18種類にのぼり、実際の業務における役割を示す「ジョブロール(役割)」に紐づけられています。

ジョブロールを担うためには、複数のケイパビリティが必要です。つまり、「プロジェクトでどのような役割で仕事をするか」と考えたとき、求められるケイパビリティ、スキルが見えてくるのです。

私たちは、NTTデータが定義した人材像を参考に、モビリティ業界で必須となるケイパビリティやジョブロールを定義しました。スキルへの学びは、NTTデータユニバーシティの伴走支援のもとで教育体系を整備しています。

「SOMRIE™」というスキルの軸が明確に定まったら、それに基づく教育体系を作っていかなければなりません。特定のスキルを伸ばしたいと思ったとき、社員が活用できる研修の仕組みが必要です。それにより、目指すケイパビリティの獲得が視野に入ってくるのです。

 

変革期に求められる迅速な人材育成をいかにして進めてきたのか


「人材育成コンサルティング」を活用して研修体系の構築が進んでいることがわかりました。導入の決め手について、当時を振り返ってお聞かせください。

広瀬:私たちは、創業から長く人材の教育に力を入れてきました。研修体系の構築には多くの時間と労力がかかることを経験から知っています。研修プログラムの作成からトライアル、定常的に運用するまで数年を要することも珍しくありません。ただ、先述の通り、自動車業界ではソフトウェア技術の開発が急速に進んでいます。私たちが磨き上げてきた領域外の、新たなソフトウェアの教育が必要になったとき、数年単位のスピード感では間に合わないのです。

そこで着目したのが、ICT企業が持っている教育ノウハウです。以前から連携していたNTTデータと情報交換を重ね、NTTデータユニバーシティがIT人材の育成について実績を重ねていることを知りました。そこで、同社のコンサルティングを通し、人材育成体系の構築を目指すことにしたのです。

増子:NTTデータが「求められる人材の姿」として、人材像定義を明確に持っていたことも魅力に感じ、当社と非常に親和性が高いと感じました。NTTデータユニバーシティの教育体系は非常に豊富なコンテンツを持っているため、選択肢が広がりますし、質の高い研修を体系化し、スピード感を持って実装していくことができます。「SOMRIE™認定制度」だけではなく、新入社員が段階的にスキルアップできるように設計された3カ年育成の仕組みも構築できました。初めてソフト部門に入る人たちでも、段階的にスキルを向上できる設計です。

 

導入から構築、実装に至るまでのスピードはいかがでしたか?

広瀬:毎週の打ち合わせを通じて、非常に丁寧に進めていただいた印象です。SOMRIE™育成制度には18のケイパビリティがありますが、それぞれの教育体系を構築してきました。これまで15の領域で体系が組み上がっており、着実に進んでいます。時代に即した開発スピードは大切ですが、ケイパビリティや専門スキルをしっかり定義しなければ、社員が学ぶべきスキルも明確になりません。NTTデータユニバーシティの担当者はSOMRIE™認定制度の芯についてしっかり理解をいただいていたため、手戻りがなく進められたと感じます。

増子:教育コンテンツをNTTデータユニバーシティの担当者に提案いただき、私たちが絞り込んで最終確定していくというプロセスで進めてきました。前例のない研修プログラムだけに、どれを選ぶべきか、手探りの状態ではありましたが、受講者からは一定の評価を得ているので、私たちと担当者の目利きはそれほどずれていなかったのではと考えています。フィードバックをかけ、さらに更新してより良きコンテンツを目指していければと思います。

 

SOMRIE™認定制度を基点に、業界への浸透を目指していく


SOMRIE™認定者数をはじめ、制度の浸透にはどのような手応えを感じていますか。

広瀬:制度の学びに割く時間や予算の確保、受講に向かう社員のモチベーション喚起など、浸透に向けて課題は山積みです。当社にはソフトウェア関連の技術者が2000人以上在籍していますが、受講率をさらに伸ばし、多くの社員にSOMRIE™を目指してほしいと考えています。

増子:社員が従来の組み込みソフトのスキルに重きを置く場合も多いと思います。将来必要になるかもしれないスキルより、目の前の業務に直結するためです。そこで、将来を見据えた学びを啓発し、いかにしてカルチャーを醸成していくかが大きな課題になります。受講に向き合い、SOMRIE™のレベルを上げる社員が増えるほど、受講の意欲は組織単位で増していくと考えています。上長の理解も増し、新たなスキルを学ぶ風土ができてくるでしょう。

そこで、私たちは、クラウドシステムを素早く構築してサービスをローンチするスキルを競う「クラウドコンテスト」や、ロボット競技の「マイクロマウス」のイベントを企画し、ソフトウェアに対する興味を引き出す取り組みを行っています。

今後の教育体系の広がりについて展望をお聞かせください。

増子:デンソーの教育は社内外から関心を寄せられており、今後は教育体系を共有していく取り組みも視野に入れています。その起点となるのがSOMRIE™認定制度です。トヨタグループや弊社の海外拠点に展開を進め、業界にも広げていければと考えています。労働力不足が深刻化する中、ソフトウェア技術者の専門性の可視化やキャリア形成を支援できれば、人材の適切な流動も活発化し、業界の発展に資するものになるはずです。

私たちの教育は車載組み込みという領域に限定されがちですが、NTTデータグループでは人材像の定義が進んでいます。SOMRIE™認定制度のケイパビリティ定義をさらにブラッシュアップし、業界全体の標準化も目指していければと考えています。

NTTデータユニバーシティとのパートナーシップに寄せる期待をお聞かせください。

広瀬:NTTデータユニバーシティの支援を受けて、SOMRIE™の認定基準や研修体系が整備できてきました。ただし、ソフトウェア関連のスキルは新たな時代に対応し、アップデートしていく必要があります。教育体系は一度作って終わりではなく、定期的に見直し、進化させていかなければなりません。定期的に見直しながらカバーする領域も広げ、受講者を増やしていきたいと思っています。NTTデータユニバーシティの広範な経験と知見を活用しながら、共創する関係を築いていきたいですね。

導入事例概要


導入目的

  • 変革が進む自動車部品業界でソフトウェア技術者を育成したい
  • ソフトウェア技術の開発、実装に求められるスキルを可視化したい
  • 社員が自律的にスキルを磨き、キャリアを考えていく仕組みを作りたい

導入した結果

  • SOMRIE™認定制度により、保有スキルを客観的に認定する仕組みができた
  • 社外からも関心が寄せられ、トヨタグループや海外拠点への展開も視野に入る

導入サービス

  • 人材育成コンサルティング(研修体系の構築)

人材育成コンサルティングの導入を決めた理由

  • 豊富なコンテンツで良質の教育体系を構築できる
  • IT人材の育成に実績がある
  • NTTデータが定めた人材像における定義を活用できる