生成AIにより受講者の質問に対する回答を自動化
~1000人規模の新入社員研修での導入を実現~

多くの企業で年々負荷が高くなる新入社員研修

近年の新入社員研修では、採用の拡大に伴い受講者数が増加し、受講者間のITスキルのレベル差が拡大しています。学生時代に情報系を学習していないNon-IT人材の採用も拡大しており、研修期間中に発生する受講者からの質問の数が増えるだけでなく、質問の内容も多岐にわたるようになりました。
従来は研修を登壇する講師が受講者の質問対応を行っていましたが、質問のボリュームが増加することで、講師だけでは同時に多数の質問を回答できないことで質問待ちが発生します。そのため、受講者にとってはすぐに知りたい回答を得ることができないケースが増加しています。
新入社員研修の目的を達成するためには、不明点があったら自分で調べることができるように、「受講者自身で疑問点を解消できる仕組み」をより拡充する、「知識・スキルが定着できる仕組み」が必要となります。

質問回答の負荷を軽減するためにAI活用に着目

そこで、当社ではAIを活用することに着目し、受講者自身が疑問点を調べて自律的に学習を進められる仕組みを構築することで、受講者からの多岐にわたる質問に回答する講師の負荷を軽減することができるのではと考えました。
その実現をさせるため、当社ではMicrosoft社の「Azure OpenAI Service」を活用し、受講者の質問にAIが自律的に回答する学習支援ソリューション「UnivTutor™」を開発いたしました。

UnivTutor™の利用イメージ

UnivTutor™は、研修受講者の利便性の観点から、特別な機器や設定は不要で、ブラウザで専用のページにアクセスし、質問を入力するだけで利用することができる方式を採用しています。
以下は、UnivTutor™の「問い合わせ」画面です。受講者は、Web画面に表示される入力項目を順番に選択し、質問を投稿します。また、ソースコードのエラーについて質問をする場合は、ソースコードやエラーメッセージを張り付けることができます。

質問項目の入力が完了したら、実行ボタンを押して質問を投稿します。ここで、Azure OpenAIに質問が投稿されます。受講者の操作は、「入力項目に従って項目を選択」することと「ソースコードやエラーメッセージの情報を入力」することだけです。
その後、「回答画面」では入力された質問項目に対してAzure OpenAIにより生成された回答が表示されます。(下の画像は、ソースコードのエラーに対する回答結果です。)

ChatGPTとの比較

UnivTutor™とChatGPTの性能を比較してみます。
研修に特化した内容であれば、UnivTutor™を使うことで簡易的にセキュアな環境でより高精度の回答を受け取ることができます。

特徴

UnivTutor™では、学習者の「わからない」をサポートするため、様々な機能や特徴があります。

1. 幅広い習熟度の受講者への自律的な学習を支援

よくある質問を分類してUnivTutor™で対応する質問カテゴリを整備しました。「演習の内容が分からない」、「演習の手順を教えてほしい」といった初学者が良く使う質問だけでなく、プログラミング科目であれば「ソースコードのデバッグをしてほしい」など、経験がある方も利用することができる質問カテゴリを準備しました。

2. 受講者が質問をしやすいテンプレート

初学者であっても簡単に質問ができるように、質問のテンプレートを用意しました。
質問を投稿する際には、そのテンプレートに従って項目を入力していただきます。

3. 講師スキルに左右されない安定した品質を提供

誰でも一定の品質を担保した説明を受けることができ、研修の品質も安定します。

4. 学習効率の向上を支援

同時に多数の質問が発生しても回答することができるため、無駄な空き時間が発生せず、効率的に学習をすることができようになります。

5. 質問ログの解析による研修の改善に貢献

受講者の質問とその回答はすべて専用のデータベースに記録されます。質問の傾向を分析し、今後のカリキュラム内容や教材の改善に役立てることが可能になります。

6. セキュアな環境での対応

UnivTutor™は、弊社のクラウド研修環境サービスであるユニバクラウドとAzure OpenAI Serviceを利用しています。どちらも利用会社ごとのセキュア環境を用意して運用することが可能です。また、これらのサービス上には、受講者の情報は保持しておりません。これにより、受講者情報は安全に確保されます。

利用実績

2024年度NTTデータグループ新入社員研修のJavaプログラミング科目(受講者数:約1,500名)でUnivTutor™を導入しました。
こちらの新入社員研修では受講者の事前スキルに合わせてレベル別カリキュラムが採用されています。各レベルの受講者のうち、中間層である一般クラスの受講者が利用している割合が一番多い結果となりました。

質問の内容としては、演習と章テストに関する質問で全体の9割以上を占めた結果となりました。質問項目別にみると、演習と章テストに対する「解答を解説してほしい」が全体の約7割を占めています。
この結果から、UnivTutor™を導入することにより、一般的に講師の負荷が高めとなる個々の解答への個別解説についてAIによる自動回答で一定の対応が行えることが実証されました。

今後の展望

「UnivTutor™」は、生成AIを活用して質問に回答する仕組みを採用しているため、NTTデータユニバーシティが提供するJavaプログラミング研修以外にも、教材データがあれば比較的容易に展開がしやすい設計です。今後は、他の研修でも本ソリューションを活用し、AIの解答精度を高めていき、講師の代わりに「UnivTutor™」で対応できる領域を順次拡大していく予定です。

*「UnivTutor」はNTTデータユニバーシティが現在商標登録中の名称です。
*その他の商品名、会社名は、各社の商標または登録商標です。